20代OLの人生消耗ブログ

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私の男/砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない

 

 

絶賛無職中、時間がありあまって仕方がなかったので、図書館をはしごすることがルーティンになってました。

 

 

桜庭一樹の本を2冊読んだので、感想をば。

ネタバレしてますのでご注意。

 

 

 

『私の男』

 

 

私の男 (文春文庫)

私の男 (文春文庫)

 

 

 

二階堂ふみ浅野忠信で映画化もされてますね。

 

父親と娘の、愛と罪と絶望の物語でした。

 

主人公は娘の花と、その養父淳吾。

花は9歳のとき震災で両親と兄妹を失い、天涯孤独になってしまったところを、突然親戚だと名乗る25歳の淳吾に引き取られます。

 

2人は出会ったときからお互いにはお互いしかいないという極限の状態で、狭く閉ざされた北の地で、身を寄せ合って生きています。

 

淳吾は花を血の人形と言います。

花は淳吾が欲しくて欲しくて仕方なかったものを持っていて、それを淳吾に与えてくれます。

血の繋がりによる、無償の愛と、赦し。

それにより淳吾は心が満たされる日々を送ることができます。

 

花は花で、幼い頃から家族と自分は違うという違和感を抱え、疎外感の中で暮らしていました。

目の前で家族全員を失い、自分だけが生き残ったことで、その疎外感が一層深まり、周囲に心を閉ざすようになります。

 

そんな中、ただ自分だけを求め、愛を与えてくれる淳吾の出現により彼女もまた救われます。

彼が与えてくれるものに、花も全力で応えたいと思うようになります。

たとえ世間には顔向けできない関係であっても。

 

物語の中で2人は人間のタブーを何度も冒しています。人を殺すこともしてますが、それは2人のなかではあまり重要ではありません。

 

読み進める度に話はさかのぼり、2人が最初は純粋にお互いを愛していたこと、関係が深くなるにつれお互い雁字搦めになって身動きが取れなくなり、息が詰まる様になっているのが分かります。

 

淳吾は社会に溶け込めなくなり、花は婚約者との結婚を控えて淳吾を疎ましく思うようになります。

 

2人の関係には終わりがありません。

どこまでいっても2人が親子であり、その為にいくつもの罪を重ねてきた事実は変わらないからです。

 

最後、淳吾は花の結婚を見送り、そのまま何も言わずに姿を消します。

多分、死ぬ為に消えたんじゃないかなと思います。

 

花は普通の親子に戻ろうとして、でも心では私の男を独占してて。

淳吾は花に自分だけの人形でいて欲しくて、でも花の幸せも願っていて。

 

どうにもならない現実だけが横たわっている。

 

 

2人の遣る瀬無い気持ちがねっとりと絡んでくるような。

そんな物語でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』

 

 

 

 

 

これも重い話です。

 

主人公は山田なぎさ。中学生で、父親を海難事故で失くしており母親と兄の三人暮らしをしています。

 

兄は同級生との何かが原因で糸が切れたように引きこもるようになり、もともと美形だったのが神懸かり的な存在になります。

少ない生活費を食い散らかす兄を、なぎさはとても愛しています。

 

なぎさはそんな家族を支えるため、早く大人になって自衛官になりたいと強く願っています。

 

そんななぎさの元に、かつて人気を博していたがスキャンダルにより地元に戻ってきた人気歌手の娘、海野藻屑が転校生として現れます。

 

藻屑は自己紹介からぶっ飛んでいて、自分は人魚で海からきたと言い張り、そんな彼女をなぎさは冷ややかに見つめます。

 

藻屑は美人で身につけているものもブランド品。都会の風を吹かせるお嬢様ですが、言うことなすこと脈絡がなく、周りに溶け込もうというそぶりも見せない。

藻屑は周囲に嘘ばかり吐き、次第に孤立していきます。

 

なぎさは藻屑に冷たく当たりますが、藻屑はなぎさが気に入り、2人は交流を持つようになります。

 

そんな中で、藻屑が実の父親から日常的に虐待を受けている様子が明らかになります。

それでも藻屑は父親しかいないと父を庇い、一方で父親から愛されることを諦めてただ耐えています。

 

藻屑は周囲の気を引きたくて、ひとりぼっちになりたくなくて、嘘という名の弾丸を撃ちまくります。

その弾丸を受け止めてきたなぎさは一人で現実に、立ち向かおうとしますが、彼女たちの力はあまりにも無力で、実弾を持つ大人には何の威力も果たせません。

 

砂糖菓子の弾丸、甘くて脆い、子供の世界。

 

藻屑も、なぎさも、なぎさの兄も、その小さな体では受け止めきれない現実にただ耐えて、そして藻屑だけ大人になることはできませんでした。

 

悲しみとやるせなさ。

そんな物語でした。